梵鐘

 梵鐘とは寺院の大鐘のことで、俗に(かね)又は(つりがね)と言います。梵とは、印度語音訳で、神聖清浄などを意味します。神聖な仏事に用いる鐘ゆえに梵鐘と言われております。鐘の概略として、上端に竜頭(りゅうず)と名づける環(かん)を設け、その下に笠形、乳の間、池の間、撞座、草の間、駒の爪となります。
 乳の間には乳(ち)と称する小さな突起が多数設けられており、当社では108個、人間の煩悩の数が付いております。池の間には寺院さんによる自由なスペースの一つとして、文字や模様の入る部分があり、最近では当社の天女を入れていただくケースが増えております。撞座とは撞木(しゅもく)のあたる部分で蓮の華をモデルとしています。そして、草の間の模様には勅許御鋳物師として、日本唯一菊の紋章の使用が許されております。
 梵鐘は銅と錫の合金で出来ており、重く余韻のこもった響きを持つのが特徴です。大きさは口径2尺4寸のものから約1寸きざみの割合で3尺5寸迄製品として御用意出来ます。それ以上のものになりますと、過去最大のものとしては口径6尺1寸の高さ10尺6寸(3m20cm)、重さ2000貫(約7500kg)の大鐘も造ったことがあります。
 当社では納めた先の風土にあった自然の緑青(青銅特有のさび)が付く為に、着色を一切しない「お化粧しない鐘」として全国でも数少ない鋳肌仕上げとなっております。そのため、一年一年年を重ねるごとに深味のある独特の色を増す事になります。
 毎年12月31日には全国の寺院で除夜の鐘が鳴らされますが、少しでも皆様の心がなごむような、そんな音をめざして日々努力しております。
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